規律があるから、自由に働ける。任せて育てる、グループホームの組織づくり障がい福祉の現場では、利用者への支援と同時に、スタッフ一人ひとりが自ら考え、判断できる組織づくりが必要です。障がい者グループホーム「わが家」などを展開するアイランドビレッジ株式会社では、細かな指示で社員を管理するのではなく、それぞれに仕事を任せることで、社員が自走できる環境をつくってきました。一方、事業所が増えるなかで見えてきたのが、自由な働き方を組織の成長につなげるための「規律」の必要性です。代表を務める島村健司氏に、任せる人材育成や適材適所の考え方、長く働ける会社を目指して進める組織づくりについて、お話を伺いました。社長が手を離し、任せることで主体性を育てる「自分が現場に入りすぎると、社員が成長しない」。会社を経営するなかで、最近あらためて感じていることです。私はもともと現場に出るタイプで、困っていることがあれば自分で動きます。ただ、私がすべてに細かく口を出していては、会社として広がっていきません。実際、現場から少し手を離したことで、社員が自分の役割に責任を持ち、自ら動き始める場面もありました。当社では、基本的にマイクロマネジメントはしないようにしています。仕事の方向性は伝えますが、「この手順でやってください」と細かな部分まで決めることは少なく、現場で考えてもらいます。だからこそ、能動的に動ける人は、経験を重ねるほど仕事の幅が広がっていきます。もちろん、任せればすべてうまくいくわけではありません。事業所が増えるにつれ、任せるだけでは会社全体の力を一つにできない難しさも見えてきました。同じ物差しで評価せず、スタッフの得意を見極める人には、それぞれ違う「パラメーター」があると思っています。営業が得意な人もいれば、数字を見ることに強い人もいますし、他にも人と接することが得意な人、現場で柔軟に対応ができる人、周囲への気遣いが自然にできる人もいます。全員に同じ仕事を同じように求めるより、「この人なら、どこで力を発揮できるだろう」と考えて配置することを大切にしています。一見すると苦手なことが多くても、仕事を変えれば力を発揮する人もいます。どこか一部分だけを見て判断するのではなく、活躍できるポジションを探していくのが、経営側の役割だと思っています。評価するときに私が見るのは、数字だけではありません。例えば利用者さんから「あの人がいい」と繰り返し名前が挙がるスタッフがいれば、それも大切な成果です。福祉はサービス業でもありますから、利用者さんにどう受け止められているかは重要です。一方で、私から見える範囲には限界があります。人を生かす配置に加えて、離れた事業所で働く人の頑張りまできちんと把握し、評価できる仕組みをどうつくるのか、日々模索しています。働きやすさの次に必要だった、「当たり前」をそろえること私はこれまで、できるだけ社員が働きやすい環境をつくろうとしてきました。ただ最近は、「働きやすいだけでは成果につながらないこともある」と感じています。象徴的だったのが、複数の事業所を回るなかで現場の課題に気づいた経験です。事業が動いているから問題ないと思っていても、実際に足を運ぶと、役割や勤務のあり方が曖昧になっていることがありました。そこで意識するようになったのが、「自由」と「規律」の関係です。私は、規律がないと、かえって自由も成立しないと思っています。船に乗っている全員が力を出していても、それぞれ違う方向へ漕いでいたら前には進みません。会社として進む方向と、一人ひとりの責任範囲を共有したうえで、自由に動いてもらう必要があります。だからといって、何でも細かくルールを決めればいいとも思っていないんです。働きやすさを残しながら、「会社としての当たり前の基準」という共通認識をつくることに、現在向き合っています。失敗も退職も、次の組織をつくる材料にする会社づくりに、正解があるとは思っていません。私自身、30代の頃からたくさん失敗してきましたし、むしろ失敗から学んだことの方が多いと感じています。組織づくりも同じです。社員に任せすぎたことで課題が生まれれば、次は役割を明確にする。人が辞めて大きな穴が空けば、なぜ一人に依存する状態になっていたのかを考える。分からないことがあれば、本を読み、ほかの経営者の話を聞き、自分で試しています。いろいろな考え方があるので、何が正しいかは今でも分かりませんが、それでも、試して、失敗して、修正することは続けています。以前、大切に育てて管理者を任せていた社員から退職を告げられたこともありました。時間も労力もかけてきた分、会社としては大きな出来事です。しかしそれをきっかけに、「どうすれば長く働いてもらえる会社になるのか」を以前にも増して考えるようになりました。当社には、80歳になっても現役で働く人もいます。本人が働きたいと思う限り、それぞれの力を生かせる場所をつくっていきたいです。今は人の入れ替わりもあり、組織として一つの転換点にいます。私自身も試行錯誤を続けながら、経験一つひとつを、次の成長につなげていきます。【企業情報】アイランドビレッジ株式会社本社住所:〒270-2241 千葉県松戸市松戸新田23-28HP:https://gh-wagaya.com/設立日:2022年10月24日代表取締役:島村 健司